ライトノベル「”文学少女”と飢え渇く幽霊」を、読み終えました。文芸部に身を寄せている心葉は、相変わらず、部長の遠子に振り回されながら、二人だけの活動を続けていた。そんなある日、中庭に設置した恋愛相談のポストに、数字の連なった怪文書が、毎日、届くようになる。早速、犯人捜しを始めた遠子と一緒に張り込みをする事になった心葉だが、夜中に、昔の制服を着た少女が現れた。彼女は、九條夏夜乃と名乗るが、自分は、とっくの昔に死んでいると言い残して、姿を消してしまった。翌日、校内で、問題の彼女を見つけた遠子だが、名前は、雨宮蛍だと言う。雰囲気も全く違うようだが、夏夜乃という名前は、知っている様子で……。
 今回は、数字の暗号文が、意味ありげに絡んでいますが、その内容で、解決できるというようなものでもありませんし、実のところ、謎解きは、あまり関係ないかも知れませんね。遠子の弟や、先輩の麻貴が深く関わっている事で、身近な事件へと発展していきますし、遠子や心葉も、かなり危険な目に遭ったりして、緊迫感があります。ストーリーとしては、愛憎渦巻くサスペンスドラマっぽい展開で、中盤以降は、かなり重苦しい空気に、読み続けるのが辛くなる程です。元々、二重人格のヒロインって、好みですが、悲劇がベースでは、やはり、気が重いですね。失ったものを取り戻す方法は、時間を戻せばいい……と言う夏夜乃の言葉が、印象的なストーリーです。
 全体的な見どころとしては、遠子の子供っぽいリアクションでしょうか……。幽霊が大の苦手という事を隠して、強がった挙げ句、腰を抜かしたり、興味本位に首を突っ込んで、身動きが取れなくなるような危なっかしい言動に、目が離せません。とにかく、些細な事でも、無邪気に、喜怒哀楽を見せる言動は、本当に、可愛いと思えるシーンがいくつもあります。麻貴が、いじめたくなる気持ちもわかりますね。



”文学少女”と飢え渇く幽霊 (ファミ通文庫)

  • 作者: 野村 美月
  • 出版社/メーカー: エンターブレイン
  • 発売日: 2006/08/30
  • メディア: 文庫