小説「偽物語 下」を、読み終えました。8月中旬のある日、早朝から受験勉強をしていた暦だが、突然、妹の火憐が乱入し、頼み事をされる。中学生の間でもファンクラブまで出来ている程の人気者という神原駿河と仲が良い事を知り、紹介して欲しいというものだが、結局、根負けし、一緒に駿河の家へ向かっていた。その途中、影縫余弦という京都弁で話す女性に、道を聞かれる。例の学習塾跡に行きたいようで、丁寧に説明して別れたが、何か引っかかるものを感じていた。駿河の家で、火憐と別れ、帰路についた暦は、家の前で、影縫と再会する。彼女は、怪異退治の専門家で、なぜか、妹の月火を狙っていたが……。

 暦の下の妹、月火のエピソードですが、最後の最後で、信じられないような怪異で、幕を閉じたという感じですね。前半は、作者の言うところのギャグパートで、暦と火憐の勝負が、禁断とも言えるエロいプレイになったり、駿河の家に向かう時も、テンションの上がった火憐が、暦を肩車するといったシーンが見どころでしょうか……。オプションとして、忍のエピソードも見逃せませんね。ミスタードーナツ好きの彼女が、初めて、念願の店内に入って、好きなものを選ぶという微笑ましいシーンです。
 後半のシリアスパートでは、月火を守るため、激しいバトル展開に……。今回は、暦と忍の関係も明確に描かれ、わかった事は、忍が暦の血を吸う量によっては、吸血鬼として復活できるという設定。当然、暦も吸血鬼になってしまいますが、この力を応用すれば、大抵の怪異は二人で解決できそうですね。あと、火憐と月火も、いつの間にか、暦と仲良くなっていますし、ひたぎの存在を知ったら、どんなリアクションをするか、見てみたい気もします。
 全体的に、タイトル通り、偽物というのが、重要なキーワードになっていますが、テーマとしては、正義と悪の観点といったところでしょうか。特に、性善説と性悪説を引用した会話シーンが、興味深かったです。



偽物語(下) (講談社BOX)

  • 作者: 西尾 維新
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2009/06/11
  • メディア: 単行本