ライトノベル「“文学少女”と神に臨む作家 上」を、読みました。遠子の卒業が間近に迫り、感傷に浸る心葉は、ななせと恋人として付き合いながらも、遠子の存在の大きさを痛感していた。そして、ある日曜日、ななせを、初めて家に招いた心葉だが、その前日、遠子が家を訪ねて来ていて、二度と会えなくなるような素振りに、強い不安を抱く。遠子と会っていた事は、ななせにもすぐにばれて、気まずい空気が漂うが、そこへ追い打ちをかけるように、流人の邪魔が入り、ななせの不安をあおって、追い返してしまう。流人を責める心葉だが、逆に、「自分が遠子の作家だと言う事を忘れないで下さい」と、意味深な言葉で忠告されて……。

 本編のクライマックス前編という事で、ついに遠子の家庭の事情が明かされて行きます。流人の策略にはまり、遠子の真意や、暗い過去、呪われた運命、そして、夢について知る事になり、深く悩む心葉は、八方塞がりの状態に……。逃げ道ばかり探す情けない状況に陥り、このまま、遠子の事を忘れて、ななせを選ぶという選択もあったはずですが、知ってしまった以上、それも難しく、どんどん深みにはまってしまいます。特に、風邪でダウンした遠子を、心葉が看病するシーン、これまで見せたことの無いような弱さが感じられる遠子に、泣けてきました。ななせも可哀想ですね。ずっと一途に思い続けてきた切ない恋心を目の当たりにしてきただけに、心葉の些細な言動に一喜一憂する姿を見ていると、切ない気持ちで一杯になります。
 典型的な三角関係の末路という気もしますが、流人の手段を選ばない後押しにより、事態は、急展開を迎え、猶予のない厳し状況の中、迫られている心葉の答えが気になるところです。


“文学少女”と神に臨む作家 上 (ファミ通文庫)

  • 作者: 野村 美月
  • 出版社/メーカー: エンターブレイン
  • 発売日: 2008/04/28
  • メディア: 文庫