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“文学少女”と慟哭の巡礼者 [ライトノベル]

 ライトノベル「“文学少女”と慟哭の巡礼者」を、読み終えました。クリスマス前に起きた事件で、ななせと親しくなった心葉は、正月に、彼女と初詣に出かけたり、映画を見に行く約束をしたりと、仲を深めていた。そんな矢先、ななせから、しばらく連絡がとれなくなるというメールが届く。不審に思う心葉に、後輩の千愛から、ななせがケガをして入院していると聞かされる。本人からは、見舞いに来ないで欲しいと連絡があり、困惑していたが、千愛に促されて、結局、行く事にした。そして、何度か病院に通ったある日、ななせが誰かと言い争っているところを目撃するが……。

 泣きました。終盤、少なくても2回は、泣けてくると思います。今回の題材は、宮沢賢治の作品で、代表作の「銀河鉄道の夜」に沿った内容でした。悲劇の作品というのはわかっていましたので、美羽との再会により、彼女が自殺を図った理由を含め、心葉を思う気持ちの真意が明かされて行く過程は、興味深かったものの、展開は、どんどん暗い方向へと流れて行き、辛いものがありました。心葉の心の傷として、今も苦しんでいる事の真相は、予想以上に衝撃的なもので、美羽が、心葉の語るような性格ではないというのは、早い段階でわかりましたし、悪役とさえ思える言動も見られ、ななせや一詩、千愛に流人、そして、遠子も巻き込んでの泥沼展開に、途中で挫けそうになりました。特に、美羽の心葉への執着が、恨み、憎しみの裏に隠された一途な思い……悲痛な叫びを目の当たりにした時は、本当に、心中するしか道がないように思えた程です。ポイントとしては、美羽の謎かけ、カムパネルラの望みは何だったのかという事だと思いますが、これも、発想の転換が必要ですね。見方を変えれば、答えは簡単に出るようで、その辺も含めて、予想外の展開が多かったストーリーです。
 人とは違う感覚に悩んだり、不幸な境遇で精神を病んでしまったり、自分の気持ちに素直になれなかったりと、人それぞれ、隠している心というのはあるものですし、きれい事ではなく、根本的に解決するのは、とても難しい事だと思います。
 それだけに、ドロドロした人間関係しか見えなかった道筋を、あっという間に解決させた遠子には、感心するばかりですね。
 納得できる結末でしたし、美羽の件は、これで、解決出来たと言えそうです。ただ、次回予告のような最後の一言……「天野遠子には秘密があるのよ。」という件の意味深な美羽の言葉が、とても気になります。考えてみると、一番、病んでいそうなのが、遠子ですし、そもそも、食事が本というのも、何かの冗談でない限り、異常ですよね。続きを読むのが、とても怖くなってきました。



“文学少女”と慟哭の巡礼者 (ファミ通文庫)

“文学少女”と慟哭の巡礼者 (ファミ通文庫)

  • 作者: 野村 美月
  • 出版社/メーカー: エンターブレイン
  • 発売日: 2007/08/30
  • メディア: 文庫



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kaz777

明けましておめでとうございます
遅ればせながら、今年もよろしくお願いいたします

今年はいよいよ文学少女劇場版の年ですね。
映画館に行くには客層が気になるのですが
でも、やっぱり行くと思います。
by kaz777 (2010-01-02 22:02) 

「直chan」

kaz777さん>
 コメントありがとうございます。
 文学少女シリーズは、まだ原作を読んでいる途中という事もあり、個人的には、まだ完結していませんが、激しく心を動かされる作品ですし、本当に、楽しみですね。でも、1巻だけでは、不十分だと思いますし、やはり、シリーズを通して、TVアニメ化して欲しい作品でもあります。
by 「直chan」 (2010-01-03 03:02) 

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