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レイヤード・サマー [ライトノベル]

 ライトノベル「レイヤード・サマー」を、読みました。夏休みを満喫していた高校生の涼平は、ある日、幼なじみの野々子と縁日に行く約束をしていたが、その途中、銀色の長い髪という容姿をした美人が、倒れている場面に遭遇する。微かに意識のある彼女は、なぜか自分の事を知っているようで、病院へ行くのも拒絶した事から、家に連れて行き、介抱する事になった。そして、目覚めた彼女から次々と信じ難い話を聞かされる。流堂庵璃という名の彼女は、遠い未来からタイムマシンによる時間移動によって訪れたらしく、目的は、未来からこの世界に逃げてきた殺人犯を捕まえる事だと言う。更に、自分が、その殺人犯に殺される可能性があるようで、その人物に関わらないようにと警告をされる涼平だが……。

 この作品、予想外に重い話で、色々と考えさせられましたが、話を複雑にしている要素として、タイムマシンの設定が挙げられます。人が住めなくなった環境の未来、苦渋の決断の末、開発されたばかりのタイムマシンで、過去に移住するという計画が、最初に庵璃が訪れた理由。ただ、色々と制約のあるタイムマシンで、ポイントとしては、自分が存在する過去には行く事が出来ないという事と、行った過去は、平行世界として上書きされてしまうという事。つまり、元の世界から見ると、過去は変える事ができないが、行く事ができるのは、上書きされた新しい世界という事になります。
 そして、もう一つ、重苦しい話にしているのは、ハルという胎児をターゲットにした殺人鬼の存在。同じ年頃の小柄な少女だけど、人間離れした身体能力を持ち、育った環境等から偏った思考を持っていると言う事ですね。
 ストーリーの方は、時間移動という設定で、ありがちですが、バットエンド回避の為に、繰り返し過去へ行くという展開で、庵璃は、3回行った事になりますが、とてもハッピーエンドとは言い難い微妙な結末で……。
 あと、この作品は、時間移動の設定で、大きな矛盾があると言われていますが、明確な解答が得られていません。庵璃の最後の願いでもある一番最初に来た庵璃を、この世界に引き止めて欲しいというのが、矛盾の鍵になっているようにも思えますが、それがわかったところで、劇的な変化が得られるとも思えませんし、好みとしては、厳しいところですね。


レイヤード・サマー (電撃文庫)

レイヤード・サマー (電撃文庫)

  • 作者: 上月 司
  • 出版社/メーカー: アスキー・メディアワークス
  • 発売日: 2011/01/06
  • メディア: 文庫



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コメント 4

ちょいのり

あらすじだけでも興味沸いてきましたですよォ^^
矛盾点はノベルとしてはどうかと思いますが。

by ちょいのり (2011-03-07 03:03) 

つるぎうお

やはりこの作品は、プロローグに始まりプロローグに終わる。でも、これはこれでいいと思います。ちょっと悲しい物語ですね。
by つるぎうお (2011-03-07 09:53) 

「直chan」

ちょいのりさん>
 コメントありがとうございます。
 キャラクターの魅力に反して、かなりシリアスなストーリーでしたので、感想てしては、残念という思いが強かった作品です。でも、雰囲気としては、劇場版アニメという感じで、インパクトの強い作品でもありますね。
by 「直chan」 (2011-03-13 22:44) 

「直chan」

つるぎうおさん>
 コメントありがとうございます。
 確かに、序章というイメージの強い作品ですが、続編に期待できるかと言うと、微妙ですよね。これでいいというか、これ以上、展開させようのない構成ですし、どう転んでも、好転できないような閉塞感が漂う作品です。
by 「直chan」 (2011-03-13 22:51) 

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